「長秀」
 不意に呼ばれて目覚めれば、床の上、散乱した札とコマ。
 赤い車のまわりにはブルーとピンクのピンが転がっている。
「あー、」
 酒の残る頭には、まだ霞。
 見渡せば、台風一過、照りつける朝日が部屋の中を不自然なまで明るく照らし出し、昨夜の陰気な気配はどこへやら、だ。
 そして高坂がいた気配もかけらさえない。空にしたはずの日本酒の瓶も。
(夢だったのかな)
 まさかそんなことはないけれど、思いながら起き上がる。
 掛け布団は千秋の体重でぺしゃんこだ。結局、まともに布団に入らなかった。
「バカだな、こんなとこで寝たのか」
 一人で何してたんだとでも言いたげな、60%は非難のまなざしで直江が室内を見渡した。
(酔っ払ってたとでも言えば納得すんのかな)
 思いながら頭を振る。
 立ち上がって伸びをしながら窓際に歩み寄ると、目に痛いまでの朝日がさんさんと眼下の森の中に降り注いでいた。
「出発、急ぐ?」
「いや?いま、晴家たちも風呂に行ってるし」
 直江が言いながら、人生ゲームの盤に気づいてそれに触れる。
 気づかずに、
「じゃ、ひとっ風呂浴びてくるか」
 部屋を出ようと踵を返した千秋の背中、
「朝飯が終わったら出発するぞ」
 直江の声と、チキチキ、と回り始めたルーレットの音が追いかけてきた。








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