忘却の詩篇三十八
昭和六十年。夏。
まだ求める人との再会はならず、
心のみ、うつろにその姿を捜し求めていた日々の、
もう忘れられた出来事のひとつ。
暗闇に沈む森の中、赤いスパークが散った。
墓を暴かれて出てきた怨霊は封じたものの、最後の一撃が効いた。
直江は空を切る足の感覚に息を呑む。
おそらく無事では済むまい。
これでは相討ちだ、そう冷静に思う反面、焦りが心を支配した。
だがこの体が滅びたとて、あなたを必ず見つけ出す。
暗闇に落ちる寸前、叫んだ言葉はおそらくその名前……
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