come back the outsider

 新宿の駅前は、新歓コンパの待ち合わせをする学生で溢れている。
 夕方に上がった雨の湿気と、人いきれでむしむしするロータリーを歩いていた千秋は、ふと目を上げて立ち止まった。
 レンガ花壇に座る一人の男。
 色白な、女性と見間違うほどの線の細い美貌と黒いつややかな髪は、年頃は同じであろう学生たちとは一線を隠した世俗離れした高貴さがあった。
 その男、ブラックジーンズに包まれた細い足を折り曲げ、あごを乗せて、楽しげに雑踏を眺めている。
 唇をひんまげ、千秋はビニール傘の柄を握り締めた。
 と、男が視線を上げる。
 迷わずに千秋の目を捉え、招くようにつややかに微笑んだ。
その赤い唇で。

「まさかてめえに会うとは思わなかったぜ」
「お言葉だな、上杉の」
 目を細め、男は唇を吊り上げて笑った。美人だけに嫌な迫力がある。
千秋は口をへの字に曲げ、男の顔をまじまじと見下ろした。
「なんでこんなとこにいる、高坂」
「ここは新宿駅のまん前だ」
 高坂、と呼ばれた男は言いながら立ち上がる。
白いうなじにかかった髪をかきあげる仕草は、男であってもどきりとさせるなまめかしさがあった。
「人がいておかしいわけがない」
「てめー、何たくらんでやがる」
 千秋はきびすを返すその背中をグッとにらみつけた。
「たくらむもなにも、私がかつていたずらに人心を霍乱した試しがあるか」
「アホか、貴様は」
「阿呆呼わばりとは心外な。
 私を少し誤解してはいまいか」
「するか、何年の付き合いだと思ってんだ。
あ、コラ!」
 立ち上がって雑踏に消えかけるその華奢な後姿を、ついつい追いかけてしまう千秋だった。
 ここのところ、気になる事件が多すぎる。
そこにこの男が現れたことに、なにか符号があるような胸騒ぎがしていた。