come back the outsider

「直江に会ったぞ。
 そもそも貴様、景虎が見つかったのは知ってるのか」
 結局、人気のない新宿御苑の前まで来て、やっと高坂は歩みを止め、憮然としながらついてきた千秋をトレンチコートに包まれた肩越しに振り返った。
「景虎?
 ああ、ンなヤツ関係あるか」
「ふん」
 高坂は鼻を鳴らし、片頬で哂う。
「笑止千万だな。だったら早く浄化してしまえばいいものを」
「……」
 とっさに言い返せず、んぐ、ことばに詰まった千秋である。
「ときに安田、情報と交換しないか」
「なにを」
「一晩の宿だ。
 その代わり、貴様に情報をくれてやらんでもない」
「断る!」
 言い切り、千秋はかさで地面を叩きながら高坂に背を向けた。
 だが、次の一言がその足を地に縫い付ける。
「上杉の夜叉衆も堕ちたな。
 それでは謙信公もお嘆きになって仕方あるまい」
「ン、だとう……?」
「みすみす情報を逃し、闇戦国の混乱も見て見ぬふりか。
 調伏力も猫に小判だな」
「……」
 千秋は足元を見つめて黙り込む。
 高坂はムカつくが、己の葛藤を言い当てられたようでもある。
関係ないとはいきがってみても、所詮この記憶をつないで生きる限り、怨霊退治のために謙信公から授かったさまざまな力を使わざるを得ない。
 そのジレンマは、最近ひしひしと感じはじめている。
「てめえ、知ったようなことを言いやがって」
「泊めるのか?泊めないのか?」
 ニヤリと哂いながら高坂がいう。
 グ、とことばに詰まってから、
「狭えんだから大人しくしろよ」
 千秋はうめくようにそう応えた。


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