come back the outsider
コンビニを出ると、高坂がポケットに手をつっこんだまま寄ってきた。
その足どりが軽い。整った横顔を伺うと、心なしかうきうきしているような――そう、高坂が嫌がらせを楽しむときの表情だ。
眉間に皴を寄せながら、千秋はコンビニの袋を持ち直し、尻ポケットにねじこんでいた煙草のパッケージを探した。
水物ばかりで重そうな音を立てるコンビニ袋に、
「持ってやろうか」
高坂がかがんでポケットから手を差し出す。
千秋はふるふると首を振った。
「いい、何かたくらんでそうだから」
高坂はフッと哂う。
「貴殿は私のことを誤解しているようだな」
(こいつの宿体、案外背ェ低いな)
すくい上げるような視線と、距離の近さに驚きながら千秋はとっさにそう思った。
とはいいながらも千秋が大きいだけで、高坂がことさら小さいわけじゃないのだろうが、その華奢な体形が余計にその印象を強くさせるらしい。
(いつも見目麗しい憑坐をお選びになることで)
しかし、それは千秋もお互い様だ。
煙草を諦め、ふと空を仰ぐと、遠くに見えるビル群がこうこうと明かりを照らしている。
高坂は2,3歩先を歩きながら、その光に手をかざしている。
なにか仕掛けるのかと一瞬ぎょっとして追いつき、顔を覗きこんだが、高坂は純粋にそれを楽しんでいるらしい。
指の間から漏れる人工の光に、無邪気な笑みを浮かべていた。
「なにがそんな楽しいんだよ」
「人の強さとは面白いな」
語尾に笑いがかぶる。
高坂はまじめにそう思っているようで、千秋はまた口をヘの字に曲げた。
いつも人を食ったようなものの言い方をするこの男が、そんなことばを口にするとは思いもしなかったのだ。
「高坂、お前、酔ってる?」
「さあな」
高坂はさっきの顔はどこへやら、再びいつもの人を食ったような笑いを浮かべている。
千秋は目を瞑って首を振った。
あの高坂なら相手をしてやってもいいのに。