come back the outsider

「いい部屋に住んでるようだな」
 玄関を開ける間、人目を避けるように立つ高坂に、コンパで女の子をお持ち帰りしてきたような気分になった千秋である。
酔いも醒めて、なんでこいつがここにいるんだろう、という感じだ。
「狭ェんだからおとなしくしろよ」
 千秋に背中で言われながらあがりこんだ高坂は、返事をせず、ただ室内を見回してニヤリと笑った。
「なんだ今の笑いは」
 むっとした千秋だが、彼はさっさとリビングのソファに陣取ってくつろいでいる。
 千秋は今日何十回目かの溜息をつきながら、冷蔵庫に買ってきたものをつっこみ、ビールだけふた缶つかんでソファの向かいに座った。
「それで?
 情報とやらを教えてもらおうか」
「早まるな、安田。
 とりあえずは乾杯といこう」
「……」
 がっくりと頭を落としつつ、ビール代くらい払えよ、と思いながら千秋はプルトップをあけた。

 そのあと話したのは、最近の各地の怨将の動向や、闇戦国自体の全体図についてで、相変わらずこの男、ひどく細かな情報網を持っていることが伺えた。
 話術巧みに、夜叉衆なら気になるようなトピックだけを伝えるせいで、係わり合いにならないでおきたいと言いながらも、思わずいろいろと質問をしてしまった千秋である。
 途中、眠気が出て、トイレに立ったフリをしてそのままシャワーを浴び、出てくると高坂はソファの背にもたれて目を閉じていた。
 遠慮して千秋がそっとリビングに入ると、
「安田の、私も風呂を借りるぞ」
 いままで起きていたかのような顔をして、すっと立ち上がる。千秋はなぜか舌打ちしたい気分になった。
「……まあいいけど、着替えは?」
「貸してくれ」
「……!」
 即答だ。いちいちあつかましい男だ。
 己のお人よしをのろいながら、千秋は高坂を風呂場に追い立て、適当な着替えを見繕って、シャワーの水音跳ねる脱衣場に置いてやる。
 釈然としない気持ちのままリビングに戻り、ペットボトルの水をあおりながらTVをつけると、深夜のニュースが独特のやる気なさで長野県松本市でおきた事件をリポートしていた。
(景虎は松本にいる)
 高坂の情報どおりだとすれば、この不可解な事件は怨将がらみということか。


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