come back the outsider

 マンションの薄い壁ごし、シャワーの音が止んだ。
 ちょっとどきどきするのは、さっきのお持ち帰り連想の続きだろう。
 ほどなくして、ぺたぺたとはだしの音がし、千秋の黒いTシャツを着た高坂が現れた。
「お前、ほんとカラダ貧弱だな」
 振り向いて、思わず言ってしまった千秋である。
千秋も対して肉付きのいい体ではないが、その千秋のTシャツでさえ高坂が着るとブカブカで、いつも通りすました顔なのが妙にかわいらしい。
 高坂は千秋のコメントを流してソファの肘掛部分に腰掛けると、さっき飲みかけたオンザロック(とは言いつつも、既に水割りになった)ゴードンを飲み干した。
「あ、それ、風呂上りにはキツくねえか」
「まあいい、寝るから」
(寝るから?!!!!)
 千秋がぎょっとしていると、高坂は当然のように隣の寝室に向かうドアを開け、中に入っていく。
「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待て!」
 言うが、高坂は壁際に置いたベッドにもぐりこんだ後だ。
「……てめえ、たたき出すぞ」
 はっきり言って、寝室は千秋の完全プライベートルームで、見られたくないあれやこれやが隠してある。
 そもそも、なにか気合が入らない限りは片付けない部屋だ。
 高坂は枕に頭を乗せたまま、ニヤリと哂ってちょいちょいと手招きした。
「同衾するか?」
「あ、あほかあ!!」
 思わず赤面して怒鳴ってしまった千秋である。
「あのなあ、信玄はどうだか知らんが、俺は至ってノーマルだ!」
「風邪をひくぞ」
「お前が居間で寝ろ!衆道慣れした人間と一緒にすな!!」
「衆道慣れとは心外な」
 高坂はいきなりくすくす笑い出した。
「直江に言い聞かせてやりたいセリフだな」
 千秋はがっくりと座り込んだ。
 高坂は寝返りを打ち、壁を向いてすでに寝る体勢に入っている。
千秋はその後ろ頭に、できうる限り険悪な声を押し出した。
「肝心の情報を聞いてないぞ」
「明日教えてやろう。
 もう疲れたから」
「つ、疲れただあ…?」
 こっちのセリフだ、という前に背中の向うからすやすやと寝息が聞こえて、千秋は脱力した。


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