接近しつつある台風の情報が、車載ラジオから伝えられる。
 感情のない、平坦なアナウンサーの口調に、千秋は欠伸をかみ殺した。
 ちらりと見やれば、助手席の直江はぼんやりとガラスを叩く雨粒越し、激しい雨にけぶる山並みに目をやっている。
「このまま山を降りても、高速は無理かもな」
 千秋がつぶやくと、直江ははっとしたように顔を上げた。
「なんだって?」
「なにぼんやりしてんの?
 雨。警報も出てるし、インターまで行っても通行止めで高速には乗れないかもよ」
「そうか。
 じゃあどこかに宿を取ろうか、高耶さんも晴家も疲れてる」
 ちょっと振り向いて、直江はそう提案した。ルームミラーを覗けば、後部座席、それぞれ窓に身をもたせ、無邪気な顔で高耶と綾子が爆睡している。
 確かに今回の調伏遠征は、短期間にやることが多すぎた。
「さっきさあ、温泉の看板なかったっけ?」
「そういえばこのあたり、温泉があったか」
 直江は膝にのせたままだった地図を繰った。
「ちょうどこの山を降りればちょっとした温泉街みたいだが、……あまり聞かない名だから期待はできないかもしれない」
「ま、ゆっくり風呂に浸かれりゃそれでいいよ」
 千秋は俄然元気をとりもどし、ハンドルを握る手に力を込めた。







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