「あ、屋上に露天風呂あるみたいだぜ」
 ビニールがへたってページ同士がくっついている館内案内を見ながら、嬉しげに高耶が声をあげた。
「今日なんか雨で水みたいになってるわよ」
 茶渋の染み付いた湯飲みでお茶をすすりながら、綾子が不満げに言う。
 なだめるように直江が、
「最上階の大浴場は大丈夫だろう。
 せっかくだから、明日の朝まではゆっくりしよう」
 その後ろで、
「あ、なにこれ、有料かよ」
 高耶が備えつけのTVを小突きながら文句を垂れる。
「ばーか、こういうのは針金で……」
 押入れのハンガーを手に寄ってくる千秋の後頭部を、直江は無言で張り倒した。







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