揺り起こされて、目を擦りながら起き上がると、すでに座卓には夕食の支度がされていた。
「あー、ぜんぜん気づかなかった」
 ろれつが回らない。だが深い眠りのおかげで体力が回復している。
「期待してなかったんだけど、意外とおいしそうじゃない?」
 丹前姿の綾子が声をはずませた。
 確かに山菜をふんだんに使った料理は、旅館の雰囲気にそぐわぬみずみずしさでもって食欲をそそる。
ただキャンセル客が多かったのか、品数がばかに多い。
 だが料理を前に、かなり空腹らしい高耶が千秋の復活を待ちかねていた。
「千秋、はやく座れよ」
「はいはいはい」
 座布団に座ると、いつのまにか風呂に入ってきたらしい浴衣姿の直江が、向かいの席からコップを手渡す。
 なみなみ入ったビール片手に、
「かんぱーい」
 綾子の声で酒宴の幕は開いた。







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