「人生ゲームなんて、そういや今までしたことねえな」
 千秋が言いながら、湿気でパリパリになった説明書を手に取るのを、高坂は涼やかに目元で笑うから、
「おまえ、ルール知ってるの?」
「ルールなどあってなきが如しだろう。
 われわれの人生など、殊更な」
 答えながら、高坂は湯呑みに注いだ酒を啜る。
「ふん、また小難しいこと言いやがって。
 要するに、ルーレットで出た数だけコマ進めりゃいいんだろ?
 あとはコマの説明どおり、と。
 で、あとは元手の金ね」
 説明書を投げ捨て、千秋は箱の中でばらばらになったカラフルな札束もつかみ出す。
 高坂はもったいぶって頷いて、
「そう、つまりは、運と金だけってことだ」
「「普通はな」」
 予期せず声が被って、二人は瞬間だけ視線を交わす。
 普通。……普通?
 もはや自分たちの生は人の域を超えている。
 そんなユーレイふたり、台風の夜に顔つきあわせて人生ゲームなんかに興じているのが、千秋は急におかしくなった。







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